プロジェクションマッピングの歴史

どこにでも自由自在に動画を映しだす「プロジェクションマッピング」(プロマ、PM)の人気が高まっています。光が強い高性能プロジェクターを何台も使い、専用ソフトで作った動画を、建物の外壁などに投影します。躍動する鮮やかな絵に、人々の目はくぎ付けとなります。

語源

「映像を投影対象に張り付ける」意の造語

プロジェクションマッピングは、「映像を投影対象に張り付ける」意の造語。映像のなかに建物を取り込むことで、映画館の平らなスクリーンでは味わえない、仮想と現実が入り交じる不思議な感覚が生まれます。

「ビデオマッピング」「3Dプロジェクションマッピング」とも

「プロジェクションマッピング」「ビデオマッピング」「3Dプロジェクションマッピング」などの呼称もあります。

プロジェクターが映像クリエイターを刺激

日本プロジェクションマッピング協会によると、プロジェクションマッピングのベースにある考え方や手法は実は古くから様々な場所で行われていました。プロジェクターが様々なクリエイターの手に渡った時から、それを使った新たな表現を求め、その流れの中で2000年ごろから自然発生的に生まれてきました。

ヨーロッパが発祥

欧州では2004~2005年ごろから企業の広告やイベントとして流行するようになりました。ヨーロッパで建築物への大規模なプロジェクションが試みられ始めると、それらの作品のスケールや完成度から大きなインパクトを与えました。

EMEAのファイナリストに

2015年には、「EMEA 最優秀イベントプロジェクト」において、ルーマニアの首都ブカレストの国民の館(ルーマニア国会議事堂)で行われた「iMapp 555(アイマップ555)」がファイナリストに選ばれました。

アジアにも波及

アジアにも波及し、市街地のビルを壊したかのように見せたり、壁を車が走っているかのように見せたりする映像は次々と動画サイトに投稿され、世界に話題が広がりました。

日本で

日本では普及が遅れていましたが、2011年7月にクリエーターらによる「プロジェクションマッピング協会」が設立されました。

原美術館や逗子の小学校

昭和初期に建てられ、優美な外観から「モダニズム建築」の傑作とされる原美術館(東京都品川区)で2011年10月に開かれたイベントでは、幅20メートル、高さ5.5メートルの壁がスクリーンになりました。また、逗子市の小学校や千代田区の専門学校などで、上映会が開かれました。

東京駅で火がつく

さらに、東京駅丸の内駅舎の外壁(幅120メートル、高さ30メートル)への投影で人気に火がつきました。

映像先進国といわれながらも、国内で取り組みが遅れていたのは、海外の都市に比べて、ネオンや商店の看板など街の明かりがまぶしすぎたことも一つの要因とされます。

鶴ヶ城の「はるか」

東京駅以外でも、2013年大河ドラマ『八重の桜』の舞台となった会津若松市の鶴ヶ城の「はるか」、世界遺産である京都の元離宮二条城でのプロジェクション・マッピングなど、歴史ある建物などでイベントが行われるようになりました。

震災復興の一環

はるか(福島県・鶴ヶ城)では、震災復興の一環としてプロジェクションマッピングが行なわれました。城の複雑な形状にあわせた映像が見事にマッチ。歴史が美しく表現されました。

プロジェクターの市場規模の推移

プロジェクター市場は、ホームシアター向け用途がけん引役となって、規模が拡大しました。ホームシアター用プロジェクター市場は2002年度で2001年度比倍増の25万台(世界ベース)となり、2003年度は35万台、2005年度には50万台に達しました。 その後も成長が続いています。

プロジェクションマッピングに関する過去の新聞記事・報道

未来を築く地域発イノベーション/福岡市

2014年3月19日 日刊工業新聞

コンテンツ産業の集積地
クリエーティブ産業喚起

福岡市はコンテンツ産業の集積地として企業誘致や人材の交流・育成を展開する。その施策は産業振興でありながら、市民向けやクリエーティブ業界向けのイベント絡めた取り組みが多いのが特徴。まず、市民や業界の関心を喚起。続けて、関連産業の誘致や新産業の育成を図り、クリエーティブ関連産業の集積や国際ビジネス交流に結びつけていくという流れだ。

高島宗一郎福岡市長

福岡市では2010年に就任した高島宗一郎市長が、自ら音頭をとってコンテンツを核に国際ビジネス振興に力を注いできた。実動部隊は経済観光文化局に設置されているコンテンツ振興課。福岡市の基本戦略は、経済・観光・文化を一体的に振興することで生活の質向上と都市の成長の好循環を創るというもの。これに基づき、局内の企業誘致課などと連携して多彩な事業に取り組む。

クリエイティブ・ラボ・フクオカ

例えば“クリエイティブ・エンターテインメント都市・ふくおか”を掲げ、国内外に向けブランド確立を図る「クリエイティブ・エンターテインメント都市づくり推進事業」。2013年1月に地元産学官で構成する「クリエイティブ・ラボ・フクオカ」を発足した。セミナーや交流会などを通じてクリエーティブ関連産業のビジネスマッチングや交流の場を創出している。2013年10月に行った市庁舎の壁面を使った国内最大級のプロジェクションマッピングは、市の内外から7000人を超える観客を集めた。

アジアンパーティ

また、アジアとクリエーティブをテーマに開催するのが「アジアンパーティ」。2013年にはタイのデジタルコンテンツ企業の商談会やファッションショー、アジアに特化した映画祭など19の事業を実施。参加人数は延べ約49万人を記録した。デジタル系起業家の育成について、2012年に「スタートアップ・サポーターズ」を設立。モビーダジャパンの孫泰蔵社長らが軸となり、コンテンツモバイル分野の起業家の育成・ネットワーキング、プロモーションを支援する。

「モノクル」でPRも

市は、2013年3月に英国政府と経済連携を促すMOU(覚書)を締結。2013年11月にロンドンのテック・シティーに経済交流使節団を派遣して、福岡市内企業と英国企業によるプレゼン大会を実施した。“住みやすい都市ランキング”をグローバルに展開する雑誌「モノクル」で市のPRもした。2014年度も派遣を予定している。

LINEの社屋建設

目に見える成果もある。2013年7月にLINE(東京都渋谷区、森川亮社長)が市内に社屋建設を発表、話題となった。市によると2013年度進出決定企業は年間目標の50社に達した(うちクリエーティブ関連産業17社)。企業進出による雇用効果は3年間で1万人超。今後も着実な取り組みが期待される。

【事例/映像コンテンツ海外に活躍の場】

プロモーション支援

コンテンツとして国際ビジネス振興に大いに盛り上がりをみせているのが、映像ビジネスだ。2014年度の目玉事業の一つとして、同推進事業に814万円を計上。映像コンテンツの海外市場へのプロモーションやビジネスマッチングを支援する。福岡市には日本初の芸術と工学を融合した九州大学芸術工学部(旧九州芸術工科大学)や理工系学部の卒業生も多く層も厚い。福岡市のフィルムコミッション事業は単なるロケの誘致や支援にとどまらず、番組や映像ソフトを地元で作れる強みを持つ。

東京五輪
オリジナルアニメ

すでに世界を舞台に活躍している企業が福岡市に拠点を構える。空気(福岡市中央区、江口カン社長)は東京五輪招致PR画像を手がけ海外からも注目を浴びた。アニメーション制作会社のモンブラン・ピクチャーズ(福岡市中央区、竹清仁社長)のオリジナルアニメ「放課後ミッドナイターズ」は2012年の公開以降、国内興行成績1億円を記録。アジアや欧州でヒットし、2014年2月末からイタリア国内約250館の映画館で公開を始めた。モンブラン・ピクチャーズの平田武志プロデューサーは「福岡市には今後も海外との橋渡しを期待する」と力を込める。

【福岡市経済観光文化局国際経済】

異業種連携、新たな価値生む

福岡市経済観光文化局国際経済・コンテンツ部の富田雅志コンテンツ振興課長に目的や課題について聞いた。

ごちゃ混ぜの文化

-福岡市が同分野の振興に力を入れる狙いは。

「クリエーティブ業界の異業種交流を進め、新しい価値やビジネスモデルをつくりイノベーションを起こそうという取り組みだ。福岡には郷土料理「がめ煮」にたとえられる“ごちゃ混ぜの文化”がある。また街中が参加する「博多どんたく」など素地がある。これらがビジネスのやり方にも通じている。人が集まり、企業が集積し街全体が豊かになり元気になる。雇用にもつながり、好循環が期待できる」

異業種同士のマッチング

-この分野における福岡市の強みは何ですか。

「文化や芸術、エンターテインメント事業も産業として捉えて一体的な振興に力を入れている。各業界の垣根が低いので異業種同士のマッチングも生まれやすい。大手電機メーカーと半導体の中小企業や、アニメーション制作会社とゲームメーカー同士など、これまでありそうでなかったマッチングが可能だ」

明星和楽in台北

-今後の課題は。

「アジアのマーケットが成長してきた。2014年1月は台湾で開催されたテクノロジーとクリエーティブの祭典『明星和楽in台北』でも福岡のプロモーションを行った。今後、元気がよいアジアのクリエイターをいかに巻き込んで海外販路拡大に結びつけるかが課題だ」